目次
はじめに
「先生、久しぶりに子供とちょっと走っただけなんです」
冬になると、この言葉を何度聞くかわかりません。
軽くジョギングしただけ。子どもと公園で追いかけっこしただけ。久しぶりにフットサルに参加しただけ。
内容を聞けば、どれも大した運動ではありません。
それなのに、ぎっくり腰になったり、ふくらはぎを痛めたり、膝が腫れたりする。
20年以上この仕事をしていますが、冬場のケガには明らかな共通点があります。
激しい運動をしたからケガをするのではない。体の準備ができていないまま動いたからケガをする。
この違いを知っているかどうかで、冬の過ごし方はまったく変わります。
今回は冬の運動に気をつけてほしい理由と、これだけはやってほしいことをお伝えしたいと思います。
寒い日でも動いても大丈夫な体づくりを目指しましょう。
冬の体は「エンジンがかかっていない車」と同じ
たとえ話をしましょう。
真冬の朝、車に乗ってすぐにアクセル全開で走ったらどうなるでしょうか。
エンジンオイルが冷えて回りが悪く、エンジンに大きな負担がかかります。
だから少しアイドリングして暖めてから走り出しますよね。
体もまったく同じです。
寒い環境にいると、体は熱を逃がさないように血流を体の中心に集めます。
手足や筋肉の表面には血液が行き渡りにくくなり、筋肉は冷えて硬くなります。
ゴムを冷蔵庫に入れると硬くなるのと同じ原理です。
この状態で急に動くと、硬いゴムを無理に引っ張るようなもの。筋肉は伸びきれず、肉離れや関節の痛みにつながります。
「ストレッチしたのに痛めた」という方へ
「ちゃんとストレッチしてから動きました」とおっしゃる方もいます。
しかし冬の場合、それでもケガをすることがあります。
理由は二つ。
一つは、寒い屋外で行う短時間のストレッチでは、筋肉の深部まで温まらないということ。
表面の筋肉を多少伸ばしても、中の方はまだ冷えたままです。
もう一つは、ストレッチから本番の運動への「つなぎ」がないこと。
ストレッチで体を伸ばした後、いきなりダッシュしたり、ジャンプしたりする方が多いのですが、その間に「軽く歩く→早歩き→ゆっくり走る」というステップが必要です。
先日来院された50代の女性は、週3回ウォーキングを続けている健康意識の高い方でした。
その日もストレッチをしてから歩き始めたのですが、途中で横断歩道の信号が変わりそうになり、咄嗟に走った瞬間にふくらはぎを痛めてしまいました。
普段ならなんてことない動作です。
でも、冬の冷えた体で、十分に温まらないまま急な動きをすると、それだけでケガになることがある。
この方の場合、ストレッチはしていましたが、ふくらはぎの深部までは温まっていなかったのだと思います。
冬に安全に体を動かすための「3ステップ」
私が患者さんにお伝えしている、冬の運動前の準備法をご紹介します。
ステップ1:室内で体を温める(5分)
外に出る前に、室内で体を動かします。その場で足踏みをしたり、軽くスクワットをしたり。
要は、外に出る前に心拍数を少し上げて、体の中から温めておくことです。
ステップ2:外に出たらまず「ゆっくり歩く」(5〜10分)
いきなり走らない。まずはゆっくり歩いて、徐々にペースを上げる。
体が「もう動いていいよ」と言ってくれるタイミングがあります。
体がポカポカしてきて、動きが軽くなる感覚です。そこまで待ってください。
ステップ3:本番の動きを「小さく」始める
走るなら最初はジョグから。フットサルなら最初は軽くパス回しから。
いきなり全力を出さないことが、冬のケガ予防で最も重要です。
この3ステップに15〜20分かけるだけで、冬の運動トラブルは大幅に減ります。
「準備する時間がもったいない」と思う方へ
「15分も準備にかけるのは面倒」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、ケガをすれば数日から数週間は運動できなくなります。
通院の時間とお金もかかります。15分の準備で防げるなら、どちらが効率的かは明らかですよね。
冬に体を動かすこと自体は、とても良い習慣です。
寒いからと動かないでいれば、体はどんどん固くなり、ますますケガをしやすくなる悪循環に入ります。
動くことをやめるのではなく、動き方を変える。 それが冬を元気に過ごすコツです。
もし運動後に痛みや違和感が続く場合は、無理に動き続けず、早めにご相談ください。
「たいしたことないだろう」と思って続けた結果、長引いてしまうケースを数多く見てきています。
まとめ|冬の運動は“始め方”で結果が大きく変わる
寒さで筋肉が固いまま運動をすると、体は本来の動きを発揮できず、思わぬトラブルにつながりやすくなります。
これは年齢や体力の問題ではなく、準備不足の体で動いてしまうことが大きな原因です。
冬は、運動を始める前から体が不利な状態にある季節です。
だからこそ、「何をするか」よりも「どう始めるか」が重要になります。
体が温まり、動きやすくなるまでの時間をきちんと取ること、急に強い動きを入れないこと。
これだけでも、冬の運動トラブルは大きく減らすことができます。
もし運動後に痛みや違和感が続く場合は、「やりすぎた」と考える前に、「準備が足りなかったかもしれない」という視点で体を見直してみてください。
それが、冬でも安心して体を動かし続けるための第一歩になります。
《柔道整復師・鍼灸師・あんま・マッサージ・指圧師 藤井敦志 監修》
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