当院では、トリガーポイントを利用した治療法で手技療法、はり療法、整体療法を組み合わせた独自の治療法を行います。
では、トリガーポイントとはどのようなものなのでしょうか。
わかりやすく説明していきたいと思います。
目次
トリガーポイントとは
トリガーポイントとは直訳すると『ひきがね点』という意味で、「筋肉の痛みの引き金となる点」と言うことになります。
筋肉は実はとてもデリケートで、ちょっとした事で損傷したり動きが悪くなってしまいます。そして、その筋肉にはトリガーポイントという『痛みの原因のポイント』が作られて、動きをさらに悪くしたり、血流を悪くします。
トリガーポイント最大の特徴『関連痛』
簡単に言うと、肩こりの人の肩にはコリっとしたしこりがあると思います。そこをさわると『痛いけどこたえるなぁ』という感覚があります。これが実はトリガーポイントなのです。よく圧痛点(指などで押したときに強く痛みが出る点)をいうとツボと同じではないかと思われますが、トリガーポイントの最大の特徴は、押しているところとは違うところに痛みを感じる『関連痛』というものが発生することにあります。
腰が痛いなぁと思って体をひねってみたら、足の太もものほうにズーンとした痛みを感じた経験はありませんか?これが『関連痛』なのです。関連痛は必ずしも痛みだけではなく、しびれやかゆみ、さらには冷感や熱感などの異常感覚を引き起こすこともあります。
トリガーポイントと圧痛点の違い
圧痛点の場合、しこりがないところにも存在しますが、トリガーポイントには索状硬結(さくじょうこうけつ)と呼ばれるロープ状の塊(しこり)の上に圧痛部位が存在します。索状硬結を指で弾いたり、鍼をさすと筋肉が局所的に収縮します。
このほかにも圧痛点との違いとして、トリガーポイントはそこを圧迫することで症状(痛み)の再現がみられたり、自律神経反応(立毛・発汗など)があったりすることがあります。
痛い場所に原因がない?
怪我をして皮膚に傷がある場合、痛む場所と原因は必ず一致します。しかし、筋肉では痛みの原因となる場所と実際に痛みを感じている場所が一致しないことが多いのです。なんと『筋肉の痛みの7割は原因となる場所から離れた場所に存在する』といわれています。肩こりで痛い場所だけ揉んでいてもケアできる割合は3割なのです。そこで痛みの原因となる筋肉(トリガーポイント)を探し出すことが重要になってくるのです。
なぜ遠いところに原因が?
筋肉の収縮にはATPといわれるエネルギーが必要なのですが、長時間筋肉を使い続けたり、ストレスを感じたり悪い姿勢をとり続けて筋肉が収縮し続けるとそのエネルギーが使われ続けて枯渇しまい、筋肉は固まります。そして、その部分の血流は妨げられ、発痛物質がたまる、つまり痛みを起こすのです。
ではなぜ筋肉の痛みは原因ではない遠いところに感じるのでしょう?
筋肉の痛みに対して鈍感な私たちの身体
実は、人間の身体は筋肉は痛みに対して鈍感なのです。その理由は、筋肉は痛みに対して敏感だと人は満足に歩けなくなってしまうから。少しの負担ですぐに筋肉痛が起きたのでは何もできません。そんなことから痛みの情報をしっかり送れないと考えられています。
原因から離れた場所に痛みが出るのは脳の勘違い
筋肉から発せられた痛みの情報は、脊髄に集められてそれが脳へと伝わります。しかし、脊髄に集められる情報は筋肉のものだけではありません。脳に伝わった時にいろんな部位からの様々な情報と、筋肉の鈍感さが相まって、どの場所からの情報なのかを間違えることがあるのです。そこで脳は「普段よく痛みを感じる部位からの情報だ」と勘違いしてしまいます。それが本当の原因より遠いところに痛みを感じる理由なのです。
トリガーポイントが発生する理由
1.筋膜のせい
人の体は筋膜という一枚のボディスーツのようなものに覆われています。これは2つのタンパク質、エラスチンとコラーゲンからできており、これらが物理的な圧や筋緊張が続くことでよじれてしまい、その部分の水分量が減って伸縮性が失われることによってトリガーポイントが形成されます。
2.ストレスのせい
人間の活動は交感神経と副交感神経という2つの自律神経によって支配され、活動的になる時には交感神経、リラックスしている時には副交感神経が優位になり体の環境を整えますが、ストレスを抱え続けると交感神経が常に活性化してしまい、筋肉が収縮を続けるためトリガーポイントが発生しやすくなります。
3.抗重力筋のせい
我々が立っている時や歩いている時ずっと働いているのが抗重力筋とよばれる筋肉群です。抗重力筋のおかげでわたしたちは重心のブレを修正しバランスを取ることができます。この抗重力筋には筋紡錘とよばれるトリガーポイントを発生しやすい感覚器が他の筋肉よりもたくさん存在します。そのため体を安定させる抗重力筋はトリガーポイントの発生が多くなります。
4.生活習慣のせい
正しい姿勢が取れていない場合、抗重力筋のバランスを崩すことになりトリガーポイントを発生する原因となります。また、トリガーポイントを治療することで一時的に痛みを取り去っても、普段の姿勢が変わらなければすぐに元に戻ってしまいます。痛みがずっと続いてしまうと脳への信号が常に送り続けられることになり、固定化されると慢性痛になります。
トリガーポイント療法で一時的な痛みを取り除くだけではなく、日常のストレスや姿勢異常を改善することが慢性痛を取り除く鍵になってきます。
トリガーポイント療法の手順
- どの動作によって痛みが起こるのかを動いて探します。
- 触診によって筋肉の硬結、トリガーポイントを特定します。
- 痛気持ちいいといわれる強さで揉みほぐします。ズーンとする感覚がえられます。
- 特定されたポイントには鍼を使い、直接筋膜に刺激を送ることでトリガーポイントを除去します。
- 痛みが持続させないためにストレッチを行います。
施術後の好転反応
施術後に施術部位の痛みが強くなる、体がだるくなるなどの症状が現れることがあります。これは悪くなっている筋肉に刺激が入ることでその部位の修復をするために急激な体の反応を起こすためにマイナスの反応も出てしまうためで、いわゆる好転反応と呼ばれる反応です。通常の場合、1日から2日で反応はおさまり修復を早めることになります。逆に言えば、その反応が出たということは体が治癒に向かおうとしているという指標にもなります。どうしても次の日が辛い場合は、後処置としての施術を行なわせていただきますのでお申し出ください。
治療の目安
治療間隔は原則として週1〜2回を目安にしてください。一回で症状が改善される場合もありますが、慢性痛をお持ちの方や、症状のある筋肉が多部位に渡る方などは、複数回の施術をお勧めすることがあります。
トリガーポイント療法の不適応症
トリガーポイントでケアできるのは筋肉に原因がある場合です。ゆえに以下の場合は施術の効果が得られない場合がありますのでご相談ください。
- 悪性腫瘍がある場合
- 開放性の外傷がある場合
- 重い動脈硬化症のある方
- 動脈瘤のある方
- 重度の骨粗鬆症の方
- 重い貧血のある方
頭痛・肩こりの場合
頭痛や肩こりの場合でも原因はいくつかありますが、肩や首まわりの筋群のトリガーポイントを刺激することで改善する例が多く見られます。
僧帽筋そうぼうきん
頸部に存在する最大の筋肉でトリガーポイントは上部僧帽筋に出現しやすい。臨床的には肩こりと同時に頭痛を伴いやすくなります。眼疾患や難聴、斜視などと関連が深い筋肉です。
板状筋群ばんじょうきんぐん
後頸部に存在し、頸椎と後頭骨(頭蓋骨の後部)などを結んでいます。大後頭神経という神経がこの筋肉付近を通過しているので、この筋の緊張は頭痛や顔面痛の原因となります。頭を後屈(上を向く)と痛みが誘発されるので、頭を前に倒してこの筋肉を伸ばすような姿勢を自然にとっていることが多いです。
肩甲挙筋けんこうきょきん
この筋肉が障害されると頸椎の前弯増強が見られるとともに、頸部の側屈がしにくくなります。僧帽筋との関わりが深く、僧帽筋が緊張すると関連して緊張を起こします。そのほかにも多くの筋肉が関連します。
腰痛の場合
腸腰筋ちょうようきん
主に股関節の屈曲に関与していて、激しいスポーツをしている若者の腰痛の方や、お腹の出っ張った樽(たる)状体型の方に緊張が多く見られます。洗顔時のように股関節屈曲位で痛みが出現する場合腸腰筋が原因である場合が多いです。
腰方形筋ようほうけいきん
腰椎の安定化に大きく関与しています。腰方形筋が緊張すると寝返りなどの動作が困難となり、横向きで寝ることが多くなります。
体幹伸筋群たいかんしんきんぐん
背部に存在し、体幹を後屈させる筋群で、多裂筋と脊柱起立筋は中心となる部位です。
(柔道整復師・鍼灸師・あんまマッサージ師 藤井 敦志)