【この記事のまとめ】膝の手術は無事に終わったのに、なぜか腰が痛くなってきた——。そんなお悩みは少なくありません。今回は両膝の人工関節手術のあと、腰の痛みが強くなった75歳男性の事例をご紹介します。実は原因は腰だけでなく、動きが少なくなっていた「足首」と「皮膚のかたさ」にありました。腰だけを診るのではなく、体全体のつながりから見直したお話です。
こんにちは。たつの市フジイ整骨院院長藤井です。
「手術は成功したと言われたのに、なぜか腰が痛い」。そんな不安を感じている方も、少なくないんです。
膝の手術を受けて、痛みがとれて歩けるようになった。そこまでは順調だったのに、今度は腰が痛くなってきた——。
「せっかく手術したのに、どうして?」と、戸惑ってしまいますよね。そのお気持ち、よくわかります。
今回は、まさにそんなお悩みで当院に来られた方の事例をご紹介しますね。同じような不安を抱えている方にとって、少しでも参考になればうれしいです。
目次
両膝の人工関節手術のあと、腰の痛みが強くなった75歳男性の事例
今回来られたのは、75歳の男性の方です。両膝に人工関節を入れる手術を受けられ、その後のリハビリもとても頑張ってこられました。
その甲斐あって、歩けるようにはなったんです。ところが今度は、腰の痛みのほうが強くなってしまい、当院に来られました。
実際に状態を確認してみると、膝は曲がるものの、十分には伸びきっていませんでした。
膝がしっかり伸びないままだと、一歩あるくたびに、そのしわ寄せが腰にかかってしまうんですね。
歩けば歩くほど腰に負担がかかる。そんな状態だったんです。
手術後は太ももの筋肉が落ちやすい ~活動量の低下と回復にかかる時間~
ここで、手術後の体に起こりやすいことを、少しだけお話ししておきますね。手術のあとは、どうしても動く量が減ってしまいます。そうすると、太ももの筋肉というのは、短い期間でも落ちやすいんです。
これは、私の経験だけで言っているのではありません。
健康な高齢の方(平均67歳)を対象にした研究では、たった10日間ベッドで安静にしただけで、脚の筋肉量がおよそ0.95kg減り、筋肉をつくる働き(筋タンパクの合成)も約30%落ちた、と報告されています。
しかも、若い方が28日間安静にして減る量よりも、高齢の方が10日間で減った量のほうが多かったんです。
「たった数週間で?」と思われるかもしれませんが、これがなかなか侮れないんですね。
(出典:Kortebein P, et al. Effect of 10 days of bed rest on skeletal muscle in healthy older adults. JAMA. 2007;297(16):1772-1774.)
特に高齢の方の場合、いちど落ちた筋力が戻るまでには、数か月から半年以上かかることも珍しくありません。
ですから、手術後に思うように動けなかったり、別のところに負担が出てきたりするのは、決して珍しいことではないんです。
「自分だけがうまくいっていないのかも」と落ち込む必要はありません。
ただ、私はこのとき、「筋肉だけが問題ではないな」と感じていました。
腰が痛いからといって、腰や太ももだけを見ていては、本当の原因を見落としてしまう。そう考えて、体全体を確認していったんです。
私が着目したのは「足首」と「皮膚のかたさ」でした

全身を順番に確認していく中で、気になったのが右の足首でした。これが、ほとんど動いていなかったんです。
さらに、足首まわりの皮膚を軽く動かしてみると、とても硬い。皮膚が、ほとんど滑らかに動いてくれないんですね。
私はここで、こう考えました。長いあいだ動きが少なかったことで、足首の関節だけでなく、その上をおおっている皮膚や、まわりの組織まで動きにくくなってしまっている。
そしてその硬さが、足首から膝へ、膝から腰へと、上のほうまで影響を伝えているのではないか——と。
体というのは、足首・膝・腰がそれぞれバラバラに動いているわけではありません。
どこか一か所の動きが悪くなると、その分を別の場所がかばおうとします。
今回でいえば、動かない足首をかばうように、膝や腰がよけいに働かされていた。だから腰が痛くなっていた、というわけなんですね。
腰だけを診ない ~足首・皮膚・関節の動きを少しずつ整える施術~
そこで治療では、腰そのものだけをさわるのではなく、足首や皮膚の動き、関節のやわらかさを、少しずつ整えていくことにしました。
硬くなっていた部分を、いきなり無理に動かすのではなく、あくまで少しずつ、です。
すると、足首が動き始めるにつれて、膝の動きにも変化が出てきました。
ここが体のおもしろいところなんですよね。足首という、腰から離れた場所を整えていくと、膝や腰まで少しずつ変わってくる。
まさに、体全体がつながっている証拠なんです。
その途中、患者さんが「少し痛いです」と、不安そうな表情をされたことがありました。
今まで動いていなかった場所が動き始めると、こうした反応が出ることがあるんです。
私は、「急に悪くなったわけではありませんよ。今まで動いていなかった部分が、動き始めた反応として考えられます」とお伝えしました。
そのうえで、「痛みが出ることもありますが、それは体が変わりはじめているサインとして受け止めながら、痛みの出ない範囲で、一緒に経過を見ながら進めていきましょうね」と、お話ししました。
その後、腰の痛みはやわらいでいきました。歩きやすさも出てきて、膝の動きもよくなっていったんです。
腰だけを追いかけていたら、たどり着けなかったかもしれません。
手術で構造が整っても「動ける体」には全身の連動が大切
手術によって、膝の構造そのものはきれいに整います。ここはとても大切なことです。でも、「動ける体」を取り戻すためには、それだけでは足りないことがあるんですね。
筋肉の状態、歩き方のクセ、そして関節の動き。こうした体全体の連動が、あとから影響してくることがあるんです。
今回の事例でも、腰だけを施術したわけではありません。
腰に負担をかけている「本当の原因」を、一つずつていねいに見直していったこと。それが、改善につながっていったのだと考えています。
まとめ ~手術後の不調や不安を感じている方へ~
「手術はうまくいったはずなのに、なぜかスッキリしない」「これって、このままで大丈夫なのかな」。そんな不安を抱えながら過ごしている方も、多いのではないでしょうか。そのお気持ち、痛いほどわかります。
今回のように、痛いところそのものではなく、少し離れた場所に原因がかくれていることは、決して珍しくありません。
大切なのは、痛む場所だけを追いかけるのではなく、体全体のつながりから見直していくこと。手術後の不調や不安を感じている方にとって、このお話が少しでも参考になれば幸いです。
一人で抱え込まず、気になることがあれば、いつでもご相談くださいね。
よくある質問(Q&A)
Q1. 膝の手術のあとに腰が痛くなることはあるのですか?
はい、実際にそうしたお悩みで来られる方はいらっしゃいます。膝が十分に伸びきらないまま歩いていると、その負担が腰にかかってしまうことがあるんです。「手術した膝ではなく、腰のほうが気になる」というのは、決して不思議なことではありません。
Q2. なぜ腰の痛みなのに、足首を診るのですか?
体は、足首・膝・腰がつながって動いています。足首の動きが悪くなると、それをかばうように膝や腰がよけいに働くことがあるんですね。ですから、痛む腰だけでなく、離れた場所の動きも確認することがあります。今回の事例でも、足首を整えていくことで腰の状態が変わっていきました。
Q3. 施術の途中で少し痛みが出ましたが、大丈夫でしょうか?
今まで動いていなかった部分が動き始めるときに、反応として一時的に感じることがあります。急に悪くなったというより、体が変わりはじめているサインとして考えられる場合が多いです。とはいえご不安もあると思いますので、当院では無理に進めず、経過を一緒に確認しながら進めていきます。気になることは遠慮なくお伝えくださいね。
Q4. 手術を受けた病院と、整骨院の両方に通ってもよいのですか?
手術やその後の経過については、まず手術を受けられた医療機関の指示が大切です。そのうえで、日常の動きづらさや体全体のバランスが気になる場合に、整骨院でのケアを組み合わせていただくこともできます。心配なことがあれば、一度ご相談いただければと思います。
🖊️ この記事を書いた人
氏名:藤井 敦志(ふじい あつし)
資格:柔道整復師・鍼灸師・あんまマッサージ指圧師 兵庫県たつの市でフジイ整骨院を開業して20年以上になります。骨・筋肉・関節の専門家である柔道整復師と、鍼灸師の国家資格を持ち、体の痛みや不調を幅広く診ています。自費専門・完全予約制のため、お一人おひとりの状態をじっくり確認しながら治療を行っています。
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