目次
はじめに
「健康のためにウォーキングを始めたのに、膝が痛くなってしまった」「毎日は無理だけど、歩いた翌日に違和感が残る」
このようなお悩みは、50代・60代の方を中心にとても多く聞かれます。
多くの方がまず考えるのは、年齢、体重、筋力の低下といった理由です。
確かにそれらが全く関係ないわけではありません。
ただ、臨床の現場で実際に体を見ていると、「それだけでは説明がつかない膝の痛み」が非常に多いのも事実です。
特にウォーキング中や歩いた後に出る膝の痛みには、体の使い方のクセが大きく関係しています。
その中でも意外と知られていないのが、つま先の向きと膝の関係です。
膝は前後に曲げ伸ばしする関節というイメージが強いですが、実はねじれにとても弱いという特徴があります。
この「ねじれ」が、知らないうちに毎日の歩行で積み重なっているケースが少なくありません。
なぜウォーキングで膝が痛くなるのか|膝は「ねじれ」にとても弱い関節
膝の関節は、ドアの蝶番のように曲げ伸ばしをするのが本来の役割です。
そのため、前後の動きには比較的強い一方で、内側や外側にねじられる動きにはあまり向いていません。
ところが歩く動作では、地面に足をついて体重を乗せ、体が前に進む過程で、膝には必ずわずかなねじれの力が加わります。
このねじれが自然な範囲であれば問題ありません。しかし、つま先の向きや足の着き方にズレがあると、必要以上のねじれが膝に集中してしまいます。
すると、歩いている最中や歩き終わった後に、膝の内側や外側に違和感や痛みが出やすくなります。
レントゲンや検査で大きな異常が見つからなくても、「歩くと痛い」「続けるとつらい」と感じるのは、こうした小さな負担の積み重ねが原因になっていることが多いのです。
膝のねじれはどこから来る?|股関節・足首・つま先の向きの深い関係
ここで大切なのは、「膝だけを見ても原因はわからない」という点です。
膝は股関節と足首にはさまれた位置にあり、どちらか一方にズレがあると、その影響を強く受けます。
たとえば、股関節が硬くなり動きが悪くなると、歩行時の回転動作を膝が代わりに引き受けることになります。
また、足首が不安定だったり、外側や内側に傾きやすい状態だと、地面からの力がそのまま膝にねじれとして伝わります。
そして、この両方に関係しているのが、つま先の向きです。
つま先が外に開きすぎていたり、逆に内側を向きすぎていると、足の着地から体重移動までの流れが乱れます。
その結果、股関節とうまく連動できず、膝だけが無理にねじられる歩き方になってしまいます。
ご本人はまっすぐ歩いているつもりでも、実際にはつま先の向きが左右で違っていたり、無意識のクセが出ていることは珍しくありません。
自宅で一瞬でできる“つま先チェック”|膝に負担をかけない歩き方の第一歩
では、自分のつま先の向きが問題になっているかどうかを、どうやって確認すればよいのでしょうか。
難しいことをする必要はありません。まず、鏡の前に立ち、力を抜いて自然に足をそろえて立ってみてください。
このとき、つま先がどちらを向いているかを確認します。
真正面を向いているか、外に開いているか、内側に寄っているか、左右差はないか。
このチェックだけでも、多くの方が「思っていたより外を向いていた」「左右で向きが違う」ということに気づかれます。
次に、そのまま数歩その場で足踏みをして止まり、再度つま先を見てください。
これが、普段の歩行に近い状態です。
このとき、つま先が極端に外や内に向いている場合、膝にねじれの負担がかかりやすい歩き方になっている可能性があります。
大切なのは、無理に矯正しようとしないことです。まずは「自分はこういうクセがある」と知ることが、膝を守る第一歩になります。
まとめ|膝だけを見ないことが、ウォーキングを続ける一番の近道
ウォーキングで膝が痛くなる原因は、単に年齢や筋力の問題だけではありません。
膝は股関節や足首と連動して働いており、つま先の向き一つで負担のかかり方が大きく変わります。
膝が痛いからといって膝だけをケアしても、根本的な解決につながらないケースは少なくありません。
まずはご自身の立ち方、つま先の向き、歩き方のクセに目を向けてみてください。
それだけでも、膝への意識は大きく変わります。
もし「自分ではよくわからない」「チェックしてみたけど不安が残る」という場合は、体全体のバランスを見ながら確認することが大切です。
膝に不安を感じず、安心してウォーキングを続けるために、体のつながりを意識することから始めてみてください。
《柔道整復師・鍼灸師・あんま・マッサージ・指圧師 藤井敦志 監修》
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