目次
はじめに
みなさん、こんにちは。
フジイ整骨院の院長の藤井です。
「座っているのがつらい」「歩くのも一苦労」「痛み止めが手放せない」―。
坐骨神経痛でお悩みの方なら、このような症状に心当たりがあるのではないでしょうか。
特に介護や看護、デスクワークなど、同じ姿勢を続けることの多い職業の方々にとって、この症状は深刻な問題となっています。
今回は、3年間の坐骨神経痛に悩まされていた介護士の方が、適切な治療と生活改善によって日常生活を取り戻された事例をご紹介します。
この記事では、症状の発症から回復までのプロセスを詳しく解説するとともに、
坐骨神経痛の予防法や自己ケアについても、最新の知見を交えてお伝えしていきます。
症状の発症から診断、全身の歪みによる複雑な症状メカニズム
3年前の右足首の捻挫がきっかけとなり、徐々に坐骨神経痛の症状が現れ始めました。
当初は軽い違和感程度でしたが、次第に症状は悪化。
2年前には椎間板ヘルニアと診断されましたが、特に股関節周辺の痛みが強く、座位保持が困難な状態に陥っていました。
痛み止めの服用による副作用で便秘に悩まされ、座薬でも2、3時間程度の一時的な効果しか得られない状況が続いていました。
さらに、産後からの右股関節の可動域制限も重なり、日常生活に大きな支障をきたしていました。
10分も歩けない状態となり、介護の仕事にも影響が出始めていました。
その後詳しい検査により、この症状の根本的な原因が明らかになりました。
特に右の仙骨周辺に著明な硬さが確認され、これが股関節の可動域制限を引き起こしていました。
さらに注目すべきは、背骨の歪みが上部の胸椎にまで及んでいたことです。
この全身的な歪みは、単に姿勢の問題だけでなく、血液やリンパの循環にも影響を及ぼし、下肢のむくみまで引き起こしていました。
上向きに寝た状態での検査では、左足の挙上時に強い痛みと可動域制限が確認され、骨盤帯全体のバランスが崩れていることが判明しました。
段階的な治療アプローチと回復のプロセス
治療は三段階の独自のアプローチで行いました。
まず最初に、ハイチャージという微弱電流治療器を使用して細胞レベルでの活性化を図ります。
この治療により、体の深部まで働きかけ、ミトコンドリアを活性化させることで細胞の代謝を促進します。
次に鍼治療を行い、血行を改善し、凝り固まった筋肉をほぐしていきます。
特に、足の太陰脾経や足の陽明胃経といった下肢の主要な経絡に対して治療を行うことで、血行促進と筋肉の緊張緩和を図ります。
最後の整体治療では、全身の歪みを調整し、本来あるべき状態に戻していきます。
この順序で行うことで、細胞レベルでの活性化、血行促進、骨格調整という段階的な改善が可能となりました。
治療開始から2ヶ月程度で、体の痛みが和らぎ、痛み止めを使用せずに日常生活を送れるようになりました。
特筆すべきは、初期には10分も歩けなかった状態から、4-5回目の治療で長時間歩行が可能になったことです。
現在では30分の散歩を日課として継続されており、自然な形での筋力維持と血行促進が図られています。
坐骨神経痛の解剖学的理解
坐骨神経は人体最大の神経として知られ、太さが鉛筆ほどもあります。
腰椎から骨盤、太ももの後ろ側を通って足先まで走っているこの神経は、歩行や姿勢保持など、日常生活の様々な動作に深く関わっています。
今回の症例で特徴的だったのは、右足首の捻挫という一見関係のない怪我が、全身の歪みを引き起こしていった点です。
捻挫による足首の可動域制限は歩行時のバランスを崩し、それを補うために骨盤が歪んでいきました。
その結果、仙腸関節に過度な負担がかかり、背骨全体の歪みへと発展。
この連鎖的な歪みが、最終的に坐骨神経への圧迫となって現れたのです。
職業性腰痛の予防と対策を日常生活から
介護職の現場では、中腰での作業や人の介助など、腰部に負担のかかる動作が日常的に発生します。
実際、介護職の約7割が腰痛を経験しているというデータがあり、いわば職業病とも言える状況です。
予防のためには、まず正しい姿勢の維持が重要です。
中腰での作業時は、できるだけ膝を曲げて腰を落とし、背筋を伸ばした状態を保つようにしましょう。
また、2時間おきの軽いストレッチは、筋肉の緊張緩和に効果的です。
日常生活において、朝の過ごし方から見直すことが大切です。
急激な動作は避け、ゆっくりと体を起こすことから始めましょう。
ベッドから起き上がる際は、まず横向きになってから上体を起こすようにします。
朝一番の洗顔は、自律神経を急激に刺激しないよう、ぬるま湯を使用することをお勧めします。
入浴時のケアも重要です。
38~40度のぬるま湯に15分ほど浸かることで、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果が期待できます。
入浴後は、急激な温度変化を避けるため、すぐに冷たい場所に行くことは控えましょう。
このように少しずつの見直しからはじめてみましょう。
回復期のセルフケアと再発予防のためのストレッチ
症状が改善してきた後も、継続的なケアが重要です。
この患者様の場合、30分の散歩を日課として続けることで、自然な形での筋力維持と血行促進を実現しています。
散歩の際は、かかとから着地して、つま先で地面を蹴り出すという正しい歩行フォームを意識することが大切です。
また、腕を大きく振ることで、上半身の筋肉も適度に使うことができます。
寝具の選択も見逃せないポイントです。
マットレスは硬すぎず柔らかすぎない、程よい硬さのものを選びましょう。
枕は、仰向けで寝た時に首が自然なS字カーブを描けるような高さのものが適しています。
その他に先ほどお話ししたように日頃から体を動かすことも大切です。
おすすめのストレッチをいくつかご紹介します。
自宅で簡単にできるのでぜひやってみてください。
お尻の筋肉を緩めるストレッチ
①仰向けになり、膝を立てて両足を床に置きます。
②痛みのある側の足を反対側の膝に乗せ、脚が数字の「4」の形になるようにします。
③その後、痛くない側の太ももを両手で抱え、ゆっくりと胸に引き寄せます。
この姿勢を20-30秒保持します。
腰の安定性を高めるエクササイズ
①四つ這いになり、肩の真下に手、股関節の真下に膝をつきます。
②対角線上の手と足をゆっくりと伸ばし、その姿勢を保持します。
このとき腰を反らさないように注意します。
ストレッチを行う際は以下の点に気をつけましょう。
・呼吸は止めず、ゆっくりと行う
・痛みを感じたら直ちに中止する
・朝一番のストレッチは避け、体が温まってから行う
・一つのストレッチを15-30秒程度、1-2セット行う
筋肉を伸ばすときは、ゆっくりと息を吐きながら行うとより効果的です。
このストレッチはできるだけ継続的に行いましょう。
継続的に行うことで効果もグッと高まります。
早期発見・早期治療の重要性
坐骨神経痛の症状は、放置すると慢性化し、治療期間が長期化する可能性があります。
以下のような症状が現れた場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
・強い痛みが3日以上続く場合
・しびれや麻痺症状が出現した時
・特に歩行が困難になったり、足の冷えやむくみが増加したりする場合
まとめ
いかがでしたか?
坐骨神経痛は、決して諦めなければならない症状ではありません。
今回ご紹介した症例のように、適切な治療と生活習慣の改善により、必ず回復への道は開かれます。
重要なのは、症状を単なる腰痛や足の痛みとして放置せず、早期に専門家に相談することです。
また、治療と並行して行う日常生活でのケアも、回復への重要な要素となります。
正しい姿勢の維持、適度な運動、十分な休息を心がけることで、症状の改善と再発予防につながります。
私たち医療従事者は、患者様の痛みに寄り添い、一人ひとりの生活環境や症状に合わせた最適な治療プランを提供していきます。
坐骨神経痛でお悩みの方は、どうぞ一人で抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。
少しでも早く痛みのない日常を取り戻しましょう!
《柔道整復師・鍼灸師・あんま・マッサージ・指圧師 藤井敦志 監修》