【この記事のまとめ】稲刈りのあと、腰が伸びない。肩まで痛い。湿布をはっても、なんとなく残る。実際にご来院された56歳男性・Kさんのケースをもとに、なぜそうなるのか、そして家でできる体操をひとつだけお伝えします。むずかしいものは出てきません。

目次
稲刈りのあと腰が伸びない・肩まで痛い|「日曜1日で終わらせないと」の重さ、よくわかります
こんにちは。たつの市フジイ整骨院院長藤井です。
秋は、田んぼの仕事がいっきにいそがしくなる季節ですね。
作業をしているあいだは夢中で、そこまで気になりません。ところが、家に帰って腰を伸ばそうとすると伸びない。次の朝、起き上がるのがつらい。気がつくと、肩までこわばっている。
湿布をはって、その日はやり過ごす。数日たてば少しはましになる。でも、なんとなく残る。
そのうち「歳だから仕方ないか」と思うようになる。
稲刈りって、日を選べないんですよね。
稲の具合と天気で、やる日が決まってしまう。平日はお仕事がある。だから日曜、家族みんなで1日。「今週の日曜、絶対に終わらせないと」「雨が降ったらどうしよう」。そんなことが、前の週から頭のすみにずっとある。
いちばん元気な体を、その日曜にぴったり合わせなさい。そう言われているようなものです。
それは、ほんとうにむずかしいですよね。

実際にあったケース|家族の稲刈りを日曜1日で終えないといけなかった56歳男性のKさん
当院に以前からご来院されている、56歳男性のKさんの話です。
平日は会社員としてお仕事をされています。稲刈りは家族の行事で、日曜のうちにやりきらないといけない。前の週から、そのことが気になって仕方がなかったそうです。
よく眠れない日が続いた。疲れが抜けないまま、当日を迎えた。そんな状態で、朝から中腰の作業を1日。
稲刈りが終わったあと、腰が伸びなくなったそうです。そして、肩まで痛くなってきた。その翌日にご来院されました。
これ、稲刈りが悪いわけでも、寝不足が悪いわけでもないんです。
気が張っているあいだは、出ないんですよね。「終わらせないと」で体がもっている。終わったあとに、どっと出る。介護や付き添いのあとに体をこわされる方と、同じ流れです。
やらないわけにいかない日が決まっていて、その日にいちばん元気でいないといけない。そのしんどさをかかえながら、よくやりきられましたね。
痛いのは左の腰と肩。でも前から硬かったのは、右の股関節と足首でした

ここからは、私が実際に体を診てわかったことです。
Kさんは以前から、右の股関節と右の足首が、左にくらべて硬い方でした。ふだんの生活では、そこまで困らない程度の差です。
ところが今回痛くなったのは、左の腰と左の肩。硬いのは右なのに、痛いのは左なんです。
そのとき、私が考えたのはこういうことでした。
中腰の作業は、股関節と足首が曲がってくれるぶんだけ、腰が楽をできるんです。しゃがむ、前かがみになる、持ち上げる。どれも、股関節と足首がしっかり曲がれば、腰はそれほど丸めなくてすみます。
ところが右側が硬いと、右で曲がりきれないぶんを、左の腰が肩代わりします。1回や2回ならなんともない。でも、それが1日中となると、左の腰が持たなくなってくるんですね。
腰がかばい始めると、こわばりは背中を伝って、肩まで上がっていきます。私の治療経験では、稲刈りのあとに肩まで痛くなる方は、この流れであることが多いです。肩だけを見ていても、なかなか変わらないんです。
そこに、寝不足と気の張りが重なりました。
疲れがたまった体は、力が出ません。立っていても、なんとなくふわふわする。そういう状態のときは、ふだん体がうまく「かばって」いた余力が減っています。同じ作業でも、出方が変わってくるんですね。
足首から股関節、骨盤、背骨、そして肩。体は下から上へ、ひとつながりです。だから、痛い左の腰と肩だけを見るのではなく、前から気になっていた右の股関節と足首のほうから見ていくことにしました。
施術と、そのあとの変化|2回目には楽になっていました

痛い左の腰や肩からではなく、右の股関節と足首の硬さから整えていきました。右が動くようになると、左が肩代わりしなくてすむようになる。そういう順番です。
一回でぜんぶ、とはいきません。ただ、2回目にご来院されたときには、腰も肩も楽になっておられました。腰が伸びる感じが出てくると、そこからは早いことが多いんです。
「痛みを探さないでください」
Kさんにも、そうお伝えしました。痛みが気になると、つい確かめたくなるんですよね。ちょっと曲げてみる、ひねってみる、押してみる。でもそれをやるほど、痛みの記憶は強くなっていきます。痛いときは「痛いな」と思う程度でいいんです。
今日からできること|壁の角を使ったスクワットを5回だけ

ここからは、Kさんにも実際にお伝えした体操です。ひとつだけ。道具も時間も要りません。
Kさんには「壁に背中をつけて、90度にひらいて、そのままゆっくりおろす・あげる、をやってみてください」とお伝えしました。もう少していねいに書きますね。
部屋の角、壁と壁が90度で出会うところを使います。
その角に背中を入れて、ぴたりとつけます。背中は壁から離しません。
足は、壁の向きに合わせて左右に90度ひらきます。右足は右の壁ぞい、左足は左の壁ぞい、という向きです。
そのまま、背中を壁につけたまま、お尻を落としていきます。ひざが90度になるくらいまで。
そこから、ゆっくり上がります。
これを5回くらい。回数より、背中が壁から離れないことのほうが大事です。
この体操の目的は、足首の曲がる方向と、股関節の曲がる方向をそろえることです。
足を壁ぞいに90度ひらいて、そのまま上下する。すると、足首が曲がる向きと股関節が曲がる向きが、同じ向きにそろいます。ふだんの生活では、ここがずれたまま動いていることが多いんですね。
正しい向きに曲がることを続けていくと、かたよっていた位置が、少しずつ良い位置にもどっていきます。だから、5回でいいんです。
痛いときにがんばってやるものではありません。稲刈りの前後、体をリセットしたいときに使ってください。
これ1つで十分です。あれもこれもと増やすと、それ自体がしんどくなりますから。ふだん通りに過ごしていれば、体はちゃんと良くなろうとしてくれます。
こんなときは、お医者さんへ
ひとつだけ、大事なお願いがあります。
足にしびれが出ている。力が入らない。じっとしていてもズキズキする。夜中に痛みで目がさめる。しりもちや転倒のあとから痛い。熱がある。こうしたときは、まずお医者さんに診てもらってください。
「いつもの腰の痛みと、なにかちがう」。そう感じたときは、遠慮なさらずに病院へ行ってくださいね。
よくある質問(Q&A)
Q1. 痛いときは、休んだほうがいいですか?
強く痛むあいだは、その動作だけをお休みしてください。ただ、一日中じっとしている必要はありません。動ける範囲で動くほうが、体はもどりやすいんです。壁の角のスクワットも、痛みが落ち着いてからで大丈夫です。
Q2. 湿布だけで様子を見てもいいですか?
数日で楽になっていくなら、それで大丈夫なことも多いです。気にしていただきたいのは、毎年おなじ時期に、おなじ場所が痛くなる場合。体の使い方のかたよりが背景にあることがあります。そこが変わらないと、作業のたびにくりかえしてしまうんですね。
Q3. 「歳のせい」と言われたのですが、どうしようもないのでしょうか?
年齢で変化する部分は、たしかにあります。ただ、同じ年齢でも痛む方と痛まない方がいらっしゃいます。その差は、体の使い方のかたよりから生まれることが多いんです。年齢は変えられませんが、かたよりのほうは変えていけます。
Q4. ストレッチや筋トレは、したほうがいいですか?
いま無理に始めなくても大丈夫です。体がかたよったまま鍛えても、効果が出にくいことがあるからです。まずは壁の角のスクワットを5回。そのあたりから始めて、体が整ってきてからでも遅くありません。
Q5. 稲刈りの前に、何かしておいたほうがいいですか?
前の週から、壁の角のスクワットを1日5回やっておくのはおすすめです。股関節と足首が動きやすい状態で当日を迎えられます。もうひとつ。当日は「終わらせないと」で体がもってしまいます。終わったあとにどっと出やすいので、終わった日の夜だけは、早めに横になってくださいね。
まとめ
稲刈りのあとの腰と肩の痛み。Kさんの場合、その日の稲刈りだけが原因ではありませんでした。前からあった右の股関節と足首の硬さに、寝不足と気の張りが重なって、左の腰と肩に表に出てきたんですね。
治療は、いわば大掃除です。大掃除が終わっても、ふだんのゴミはまたたまります。だから、たまりにくい体の使い方を、ひとつだけ。壁の角のスクワット、5回からで大丈夫です。
やらないわけにいかない日が決まっていて、その日にいちばん元気でいないといけない。そのしんどさをかかえたまま、だましだましやり過ごすしかないと思っておられるなら、一度、体の使い方のほうを見てみるのも手ですよ。
🖊️ この記事を書いた人
氏名:藤井 敦志(ふじい あつし)

資格:柔道整復師・鍼灸師・あんまマッサージ指圧師
兵庫県たつの市でフジイ整骨院を開業して20年以上になります。骨・筋肉・関節の専門家である柔道整復師と、鍼灸師の国家資格を持ち、体の痛みや不調を幅広く診ています。自費専門・完全予約制のため、お一人おひとりの状態をじっくり確認しながら治療を行っています。
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